It's never too late, never too early!
(何をするにも早すぎることも遅すぎることもない)

case one
ギター製作・修理工房
ヴォイジャーギターズ
櫻井 航の場合


ギター工房をやってます!

堀井(以下H):お久しぶりだね!
櫻井(以下S):ご無沙汰してます。

H:今日はね、進路について考えてる人たちに参考にしてもらおうと思って少し話を聞きたいんだけど
S:ハイ

H:まずは、今はどんな仕事?
S:自宅兼作業場でギター工房をやっています。オーダーメイドギターの製作や修理ですね。

H:エレキもアコも?
S:両方OKです。あとエフェクターやアコギ用のプリアンプなんかの開発もやってます。

H:出た!エフェクター!相変わらず好きだねぇ〜。キミがモディファイしてくれたエフェクター未だに使ってるよ。ていうか返してないだけだけど(笑) キミは2年生のときはエフェクターばっかり作ってた印象があるもんね。でもアコもちゃんと勉強してたんだね。
S:ええ、やってましたよ(笑)

H:お客さんは?
S:マニアックな人が結構いますねぇ〜。このあいだもメンテナンスで世界に数本しか現存しないっていうギター持ち込まれちゃいましたよ。

H:いや、キミも充分マニアックだよ(笑) でも、他の個人工房やってる卒業生もやっぱりマニアックなお客さんが多いって言ってたよ。普通の楽器店では対応しきれないことでも対応できちゃうもんね。
S:そうなんですよ。その分苦労も多いけど面白いですよ。

H:なるほどね。

ヴォイジャーギターズを
写真で紹介 part1
ヴォイジャーギターズの工房内。
製作中のソリッドギター。機械加工を最低限にとどめ、多くをハンドクラフトで。高い技術が必要だが櫻井氏のこだわりでもある。
リペアのストラトキャスターを組み込み作業中の櫻井氏



同じものを目指す仲間がいる

H:ところで櫻井君は中学校卒業してすぐGCAに入ったんだよね?
S:そうですね。親の仕事の都合で小学校3校、中学校2校に行ったんですよ。転校ばっかり。それで最後に行った大阪の中学校でドロップアウトしました。1学期が終わってそのあと卒業までずっと夏休みでした(笑)

H:長いね(笑) それで中学を卒業してなぜうちの学校を選んだの?
S:中2のときにギターを始めたんですけど、ギターの雑誌読んでてそこに載ってるGCAの広告を見たときにこんな世界もあるんだな〜と興味を持ったんですよ。当時は高校に行く意味も感じられずに自分がやりたいことを探していて。ここなら中卒でも行けるし自分の好きなことが学べると思ったんです。

H:実際入ってみてどうだった?
S:ギターに関する製作技術はもちろん、歴史や木材などの知識、エフェクターなどの電子回路についてまで総合的に学ぶことができましたね。その幅の広さが今の仕事でも役立っていますよ。

H:おお、素晴らしい!でもGCAで学ぶうえで高校に行かなかったことで困ったこととかはなかったの?
S:特にないですね。クラスメイトがほとんど年上なので最初は戸惑ったけど、同じものを目指してる仲間としてすぐに仲良くなれましたし。

H:楽しそうにやってたよね。
S:楽しかったですよ。だって学校では好きなことを好きなだけやってたって感じですもん。あとから考えるとそれが学んでたということかなと。

H:その感覚はわかるよ。私も在学中は好きなことをひたすら夢中でやってたって感じだったよ。



ヴォイジャーギターズを
写真で紹介 part2
ヴォイジャーの代表モデルVG-1
日本人にも弾き易いギターがコンセプト。
南伊豆らしい亀のインレイがワンポイント。
ファンフレットを採用したアコ2機種。左のモデルは3Dカッタウェイでサイドバックにローズを使用。右はマホガニーのサイドバック。
左はオーダー品。キルトトップの杢が美しい。
右はトラ目の入ったアッシュにビグスビーやTV JonesのP.U.を搭載した遊び心いっぱいのモデル。



後で後悔したくないから挑戦する

H:で、GCA卒業後は?
S:英語を勉強したいってこともあったし、海外に行ってみたいってこともあったのでイギリスに行きました。もちろんギター製作もしたかったので向うの工房で製作もやりました。これも勉強になりました。

H:帰ってきてから一度就職したよね
S:某大手楽器メーカーですね。ここでも生産技術とか色々勉強になりました。でも、働いているうちに本当に自分がやりたい楽器製作がどんなものか見えてきて、その思いが大きくなったんです。それで退職して工房を開く準備を始めました。

H:工房を開くのは大変だったんじゃない?
S:う〜ん…でも、GCAで学んだりイギリスの工房や楽器メーカーで現場を経験してきたので何をどうすればいいかは大体わかりましたから。それに、自分のやりたいこと、好きなことをやってるわけだから大変というより楽しいほうが大きいですよ。

H:その工房を立ち上げてもう3年以上だけど、好きなことを仕事にしてる今はどんな感じ?
S:お客さんに「ありがとう」って言ってもらえることが一番うれしいですね。それに仕事や音楽を通じていろんな人間関係ができることも楽しいです。あと、自分が手がけたギターに弦を張って音が瞬間。これは何度経験しても感動します。

H:いい仕事してるみたいだね。それじゃ最後に進路について考えてる人にメッセージを下さい。
S:はい。もし進路に迷っているのであればとことん悩んだほうがいいと思います。でも何もせずにあとで後悔するよりは挑戦したほうがいいと自分は思います。その思いで今も工房をやってます。高校卒業資格が必要ならいつでも取れますし、自分も大学に行きたくなったら取って行きますよ。It's never too late , never too early.(何をするにも早すぎることも遅すぎることもない)です!

H:有難うございました。



櫻井航(さくらい こう):1983年生まれ。中学校卒業後、15歳でGCA名古屋校入学。エレクトリックギター製作コース、アコースティックギター製作コースで学び2年で卒業。19歳で渡英し英語学校卒業後ギター工房にてさらに自身の楽器作りを追及する。帰国後の2006年、若干23歳で静岡県南伊豆にギター製作・修理工房VoyagerGuitars(ヴォイジャーギターズ)設立。オーダーメイドクラフトや修理からエフェクターやアコギ用プリアンプ等の開発までこなす。また、地元のスタジオとのライブ共催など地域に根ざした活動で地元ミュージシャンとの親交も厚い。5月に行われるTOKYOハンドクラフトギターフェスティバルにも出品予定(GCAも出品予定)。
ホームページはhttp://www.k5.dion.ne.jp/~voyager

あとがき:
在学中から興味を持つととことん突き詰めるタイプの櫻井君だったけど、今もそのマニアックぶりは健在。このインタビュー、実は電話やメールのやり取りで行ったものなんですが、そのあいだもギターの話や機材の話などで脱線しっぱなしでした(笑)誰もが彼のようになるとは限りません。でもあとで後悔しないために今やりたいことをやる。それは大切なことだとこのインタビューを通じて感じました。最後の言葉には勇気をもらった気がします。櫻井君、ありがとう!